読んだ本の感想とか:衝動のままにカードは限度額オーバー・鹿島茂『衝動買い日記』
突然ですが、あなたはお買い物、お好きですか。
ひきばあは大好きです。
ひきこもっているのに不思議かもしれませんが、いまはネットでなんでも買えますから。
むしろひきばあのお買い物の90%はネットショッピングかもしれません。
そんなひきばあは、ネットショッピングではずいぶん失敗もしてきました。
ネットだと、衝動のままにポチっとクリックするだけで、即購入できてしまうのが怖いですよねえ。
これほしい!が着火したら、もう一瞬。
あーやだやだこわいこわい。
でもやめられない。
お買い物にはなにかの魔力があるような気がします。
とはいっても、ひきばあのは中村うさぎさんのそれとはちょっと違う感じなんですよね。
そもそもブランドものとか興味ないし、宝飾品もほしくないし。
そんなひきばあが、この人のお買い物は素敵!素晴らしい!と感心したのが、鹿島茂先生。
あ、ひきばあはこのブログで、作家さんをどう呼ぶかずいぶん迷って、結局「さん」付けにすることにしたのですが、鹿島先生は別です。だって、大学の先生だし。そういう意味での先生です。
閑話休題、その鹿島先生がすなる「衝動買い」の一端を垣間見せてくれるのがこの本。
鹿島茂『衝動買い日記』(中公文庫)
鹿島先生の、エネルギッシュなお買い物の数々が綴られた、軽妙にして捧腹絶倒のエッセイ集。
先生、日常生活においても旅行先でも、欲しいと思ったら手に入れずにはいられないタイプのようです。
本書に収められたお買い物24点は、そんな先生の情熱の火柱が走り抜けた軌跡。
しちりんから稀覯本に至るまで、衝動買いとは銘打つものの、すべてに本気がみなぎっています。
お買い物は出会いです。
出会ってしまったら、その場で決断しなければ、二度と巡り合えないかもしれない究極の出会いなのです。
その出会いを逃さじとする先生のお財布はカードでぱんぱん。
大学教授にしてフランス文学の権威、多くの賞を受賞した著述家でもある先生にして、サラ金のカードまで複数枚持っていたというのはさすがに狂気じみています。
先生、旅先のパリの古書店で稀覯本に出会おうものなら、男らしく腹をくくってカードを切ります。
しかしやんぬるかな、そのカードは限度額オーバー。
ここで悪魔が耳打ちする。お財布には別のカードが入っているよ、と……。
ああおそろしい。
お買い物にとりつかれてしまうのは、ふところに悪魔を飼っているのと同義です。
この本のすごいところは、買った品物にまったく一貫性がないこと。
というより、一冊のエッセイ集に仕上げるにあたり、バランスよく楽しめるよう先生がチョイスした品々だと思うのですが
その背景に広がるお買い物の砂漠というか、通り過ぎてきた品々の厚みというか、そんなものを感じてぶるぶるしてしまいます。
購入できるものについては、各章文末にお問い合わせ先がついています。
読者の衝動買いをも促す、心憎い気遣いはさすが。