話題沸騰『鬼滅の刃』1〜17巻をばあさんが一気読み
いやあ、すごいですねえ。
飛ぶ鳥を落とすというか破竹というか、『鬼滅の刃』の勢いたるや追随を許さず。
週刊少年ジャンプ連載→テレビアニメ化→劇場版と、ジャンプの王道をひた走っている作品ですが、ひきばあは今日まで読んだことがありませんでした。
ひきばあ、マンガ好きなんですけどね。
なんていうか、ジャンプ連載勝ちパターンというだけで食傷気味というか。
「友情、努力、勝利」の三つとも押さえたいつものアレなんでしょ?って感じで。
なんて斜めから見てしまうのは、ひきばあがかつてチャンピオン派だったからなのかもしれません。
鴨川つばめ『マカロニほうれん荘』や、石井いさみ『750ライダー』なんかが大好きでした。
それはさておき『鬼滅の刃』。
このまま読まずに終わっちゃうのかなーとか思っていたら、ぜひ読みなさいと知人が貸してくれることに。
というわけで、急きょ1〜17巻を一気読みすることになったのでした。
とても端折ったあらすじ(のようなもの)
舞台は大正時代(考察はともかく)。
主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)はある夜、留守をした間に家族を鬼に襲われ喪う。
ただひとり、妹の禰豆子(ねずこ)だけは命をとりとめたものの、身体は鬼へと化身していた。
炭治郎は大けがをした禰豆子を治療すべく山を歩く。
そこに鬼討伐を目的とする「鬼滅隊」の冨岡義勇(とみおかぎゆう)が現れ、炭治郎を修行の道へと導く。
炭治郎は厳しい修行のすえ、鬼殺隊の最終戦別に合格、鬼殺の剣士として生きる決意をする。
立ちはだかる敵鬼を前に、炭治郎は、そして禰豆子は--。
黄金のジャンプシステム
ストーリーはあらかたの想像通り、苦難を受けた少年が闘いを通じて成長し、独自の必殺技を編み出し、敵の首魁に迫る活躍をするというもの。
これは昔からの(大げさか)ジャンプの黄金ストーリーですね。
メガヒットを放った作品の多くがこんな感じです。
なので読んでいて安心というか、まあパターンではあるなというか、少年マンガの王道の強さを見せてもらったということでしょうかねえ。
ストーリーが進行するにつれ敵は強大になり、同士との絆は深まりしかしその中で死という衝撃的な別れもあります。
こうしてまとめてしまうと、見たよ見たいつか見たよねと。
でもそれがつまらないわけではなく、「いま」の空気を折り込んで、むしろ新鮮な作品として再構築しているところが『鬼滅の刃』の魅力なんだと思います。温故知新。
つまるところ勧善懲悪は現代も万人の求めるところであり、純粋無垢でポジティブな少年に理想を重ねるというのは、まさに黄金のジャンプシステムというべきかと思います。
そういう意味でとっても保守的。
時代は保守を求めているのでしょうかね。
『鬼滅の刃』に思ったこと
保守的といえば、時折挟まれる息抜き的ギャグのセンスも、いつかどこかでのデジャヴ感。
『すごいよ!マサルさん』以来、こういうの増えたなという気がします。
序盤では『ワンピース』的展開も。
編集部がこの作品に相当力を入れて関与していることを匂わせます。
ときどきぐらつきのあった作風が花開いたのが7・8巻のいわゆる「無限列車編」ではないでしょうか。
劇場版映画にもこのエピソードが採用されたとおり、ぎゅっと引き締まった読ませるストーリーになっています。
ひきばあもこのエピソードが一番好き。
キャラクターがよく描けているのでしょう、煉獄杏寿郎(れんごくきょうしゅろう)がとても魅力的で、大好きになりました。
キャラクターといえば、もうひとりの主人公ともいうべき禰豆子の魅力も忘れられません。
鬼の血を浴びて鬼と化しながら、人間を襲わず兄とともに闘う新しいヒロインは、口に(牙に)竹筒を噛ませたありえないビジュアルであっという間にファンの心を掴みました。
禰豆子の絵を最初に見たときは驚きました。
だってこれ……バイトギャグ……いや噛み猿轡なんだからそうなんだけど、むしろ本来の使用法なのかもしれないけれど、少年誌……?
そういえばこの作品では昔なら成人向けであったような、危ういエロスのエッセンスが散りばめられています。
禰豆子のギャグしかり、蜘蛛の鬼の緊縛しかり。
炭治郎の底抜けの明るさに対比する、そこはかとない暗いエロスの匂い。
そこに大人も子どもも惹きつけられてしまうのかもしれません。
ときどき日野日出志っぽい表現があったりして、作者の好みなのかな?と思ったり。
まあ細かいことは置いておいて、人気があるのは納得できる作品でした。
ひきばあはコミックス17巻までしか読んでないのですが、これからどうなるのか期待しています。
でもって、ちょっと不安です。
ジャンプシステムでは、大ヒット作品はなかなか連載をやめさせてもらえません。
果たして、『鬼滅の刃』もダラダラと蛇足を重ねる作品になってしまうのでは、と。
ふと、『聖闘士星矢』の最後のグダグダっぷりが頭をよぎるのでした。
しかし一気17巻は疲れました。
この作品なかなかのカロリーなので、老体にはこたえるのですよ……。
そして明日は入院。
大丈夫なのかしら自分。
人の不安より自分の不安をなんとかしないとって感じの深夜12時です。