読んだ本の感想とか:エリック・マコーマック『雲』
こんにちは、ひきばあです。
昨年末に図書館に行ったのですが、 借りてみたい本はどれも貸し出し中で。
残念に思いながらも、新刊コーナーで見つけたのがこの本です。
エリック・マコーマック『雲』(東京創元社)
これ、ツイッターで見かけたんだっけか。
おぼろげながら記憶にある書名でした。
手に取るとずっしり461ページ。
うーん。ひきばあにはヘビーかも…
とは思ったものの、この不穏な雰囲気の表紙が気に入ってしまいました。
カバーの袖には
幻想小説、ミステリ、そして ゴシック小説の魅力を併せ持つ、 マコーマック・ワールドの 集大成とも言うべき一冊。
とあり、なかなか魅力的。
まずは借りてみることにしました。
めちゃめちゃ端折ったあらすじ(のようなもの)
プロローグの舞台はメキシコ、雨宿りに入った古本屋で手に取った謎めいた本––。
この本に奇妙な因縁を覚えた主人公は、稀覯本の専門家に調査を依頼します。
その「因縁」について、主人公の波乱の人生が、生い立ちから語られます。
寄せては返す波のように、切れてはつなぐ蜘蛛の糸のように、出会いがあり別れ再会し、愛に縛られ愛に傷つく主人公なのでした。
紡がれていく人々との絆は、あの本が仕掛けた最大の謎だったのでしょうか。
あれ?本は?ねえ、本のことは?
いやー、第一の読後感は、
んで、黒曜石雲のことは、嘘っぱちでおk?
だったひきばあです。
だってねえ、プロローグですっかり期待しちゃったんですよ。
これは一冊の本をめぐるミステリー・ロマンもしくはゴシック・ロマンなのではないかと。
でもちょっと違いました。
もちろん本は重要なファクターなんですけど、本は本でしかなかったのね、と。
それ以上のものを求めたひきばあがいけないのでした。
黒曜石雲っていう魅力的な単語、次々と現れる不吉なモチーフ、奇怪、陰惨、不愉快で暗鬱なエピソード。
文中に散らばる黒いしみのようなそれらに目を奪われて、そっちにばっかりワクワクしてしまって、そうなの。実は
読後がっかり案件
だったんです。
煽り文からはテーマが読めなかった…
後半になるとさすがに気づいたんですよ。
えー、これ、もしかして、愛と倫理がテーマなの?って(えー)。
そういうの求めてなかったのでねえ。
ロボトミーの話とかも、突然すぎてなんなのって鼻白んでしまいました。
読者に不気味さを味合わせたいだけにこのエピ書いてない?とか、そのへんになるともうかなり意地悪に読んでました。
取材しました書きました感がチラ見えすると、ひきばあはあんまりご機嫌じゃない。
最後にちこっと語られる、謎の本の調査結果も、もはや蛇足風味で流し読み。
衝撃(でもない)のラストに至っては、なんなのこれ。
なにがしたかったんですか?
と、すっかり冷めたばあさんになっちまっていたのでした。
おもしろくなかったわけではないのですが
訳がなめらかで読みやすいのはよかったです。
原文の雰囲気というのはあるだろうけれど、やりすぎなのも、愛想なしも興ざめなものだから。
翻訳ものは訳者の腕次第ってとこ、ありますよねえ。
あと、いろいろな冒険は、純粋に楽しめました。
そうですねえ、物語のパーツを小さく切り取って、ひとつひとつ味わうのは楽しかったんですけど。
全体としては、ひきばあの好みでなかった、という感じでしょうか。
ま要するに、好みの問題ですよね。
愛とかちらつかせられるのは好きじゃない、ひきばあは老人なのでもはやそのあたりの感受性が鈍いのでしょう。
若いひとが読んだら、少し違うのかもしれない。
そう思いました。